見たものブログ

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恐怖体験を乗り切るための : 『カイゼンジャーニー』

カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで

カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで

カイゼンジャーニー』を読んだので、メモを残しておきます。

本書と、この間読書メモを書いた『エンジニアリング組織論への招待』、同じ2018年2月に発売されてたんですね。両方ともマネジメント関連の本として名作で、同じタイミングで同じ日本でこんな素晴らしい本が生まれてしまうなんて、こんな偶然あるもんかと。

k-nakahashi.hatenablog.com

両書の私の読後感は対照的で、『エンジニアリング組織論への招待』は、マネジメントへの自信(を通り越して万能感)のようなものが芽生えたのに対し、『カイゼンジャーニー』は「マネジメントって大変だな」と思わされました。

「越境」の難しさ

本書、ストーリー仕立てでマネジメント手法をさまざま紹介するという構成になっています*1。テンポよく課題と解説を提示してくれるので、マネジメント道具箱のまとめという意味でとても有意義でした。

道具箱もちらかっていると取り出しにくくなるため、こちらの書評はとてもありがたかったです。その辺りを重点的にすっきりまとめてくれています。

カイゼンジャーニーを読んだ - Do Something

こういうまとめ書こうと思ったらすでに書かれていたので、ありがたくブクマ。

2018/11/05 23:17

さて、なぜ私が本書を読んで「マネジメントって大変だな」と思わされてしまったかというと、本書で重要なキーワードとして扱っている「越境」についてです。

発注者と受注者、事業と開発、チームとチーム、チーム内のメンバー同士の間、至るところに「境界」は簡単にできる。

これ、あるあるですね。至るところにできますね、「境界」。

でもいちいちなんで「境界」なるものができるかというと、やっぱり自分たちにとって心地のいい範囲でコミュニティを作って、その中だけでコミュニケーションしていくのが楽なんだからじゃないでしょうか? 文化や活動目的の違う人物とコミュニケーションするのは大変ですし、会社に限って言えば追っている数字が違うと評価システムなどを統一することも難しいですからね。

「境界」を隔てた相手と会話をしたい場合、コミュニティ同士でインターフェイスを作って、その規約の通りでだけ通信するのが有効です。これによって会話のたびに文化の差を考慮するような負担は少なくなりますし、それが組織でありシステムってもんなんじゃないかとさえ思ってしまうんですよね。*2

しかしそれだとインターフェイスがすぐに陳腐化して適切な開発ができなくなるので、近代的なマネジメントの道具を駆使してなんとか「越境」していく。それが本書で描かれているストーリーです。

僕は、「境界」をつくり、そこで攻防するような開発ではなく、境界に自分から踏み込んでいく「越境」を選びたいと思う。

それって、今までちゃんと動作していた組織が陳腐化してしまうという現実を突きつけられるというフェイズが大抵あるわけで、普段はそういった組織のメンテナンスをしているマネージャとしてはすごく怖い瞬間を見ないといけないのだなと。

修羅場は基本的に見たくないが、直視しなければいけない

本書では何度も「修羅場」っぽい言い争いが出てきます。

「なんや! ほなどういう風にしたいんや!」

「だから、スクラムをやめたいと言っている」

西方さんは、とうとう、席を立ってしまった。何も言わず部屋を出ていこうとする。

「ほな、スクラムマスターはもういらんわな」

まさに、捨て台詞だった。

実際の現場だとこういうことはまれで、もっと湾曲的でやんわりとしたコミュニケーション齟齬みたいなものが、ゆっくりと蓄積していって気が付くとうまくいかなくなっていく、みたいなこと多いのではないでしょうか。

どちらにしろ、キックオフMTGのときはあんなにキラキラしていたのに、なんでこうなってしまったんだろう...と思わずにはいられません...w 嫌ですよね、見たくないですよね。やっぱり「不機嫌な他人とのコミュニケーション」というものは基本的に難易度高いわけでやりたくないです。

でも課題を解決するには逃げずにそれをやっていかないといけないわけで、マネージャというのがはなんて因果な商売なんだろうと思わずにはいられません。

そういった状況に陥る前に、情報を絶えず集めて問題を察知せよ、と教科書には書いてあったりします。でも現場というものは、得てしてそう都合よくできていないよな、と思います。

まとめ

最近新しめの本を読むことが多いので、次はこれを読もうと思います。

人月の神話【新装版】

人月の神話【新装版】

*1:ある意味小説を読んでいるかのような本書、これは無数にある手法の適用方法を学ぶという意味では非常に有用な構成だと思います。手法のカタログをひたすから溜め込んでも現場で取り出せなくても意味はないですし、現場の課題というものは、ある意味そういうシチュエーションになってみないとわからないものですから。

最近はめっきり読まなくなってしまったのですが、私は学生時代に集中的に小説を読んでいた時期があって、そのときの読書モードは自分の中のあまり他人に開いてはいけないポートを開いているような感じになってましたw 純文学系の自意識高い(?)系や読むと病んで気持ちよくなるタイプの小説が好きだったもので...

その後遺症で、未だに小説に類するものを読む際に変なテンションになってしまい、「有用な情報を小説から取り入れる」という風に頭を切り替えらません。なのでこの本読んでいると、妙な居心地の悪さみたいなものに襲われてしまうことが何度もあって... 小説を読み始めたら最後、私は「病みたい、ぶっこわれる何かを見たい、むしろぶっこわれたい」となってしまうものでww

多分こんなかわいそうな読者は私だけですし、まっとうなマネージャの方であれば正しく本書のエッセンスを摂取できるものと思われます。

*2:本書の中で出てくる「コンウェイの法則」とはこのことですね、多分.