見たものブログ

Webエンジニア(元組み込みエンジニア)が、本とか見たものをメモしていくブログです

「未来」と「他人」をなんとかする : 『エンジニアリング組織論への招待』

からっぽな頭にノウハウを詰め込んで取り出せなくなる問題

私は、エンジニアがいる組織でマネジメントっぽい仕事をすることがあります。

なにがしかの課題が与えられたとき、とにかく考えるのはもちろんなのですが、先人の知恵をどれだけ拝借できるか、要は「ノウハウをどれだけ知っているか」は重要ですよね。

とはいうものの、これらのノウハウとやらは使ってみないと使うコツはわからないし、数も多いので把握しきれません。経験で成長できる範囲にも限界があるので本を読んだりするのですが、現場で課題に直面した際にどれだけ自分の引き出しからノウハウを持ってこられるのか、相当怪しいものがあります...w

マネジメントに関する課題に対してどのようにノウハウを適用していけばいいのか。

ある程度なら反復練習で何とかなる部分もあるでしょう。「メンタリングには傾聴が大事」だということを覚えておけば、とりあえず役には立つはずです。

困るのは、「メンタリングには傾聴が大事」ということに関して、他の課題への応用が利かせずらいことです。

「納期に遅れそうだけどどうしたらいいのか」といった新たな課題が与えられた場合、メンタリングのノウハウはこの課題に応用できないため、すぐ詰みます。

本書は素晴らしいのは、課題への対応の指針として「不確実性をマネジメントせよ」ということを教えてくれていることです。数あるマネジメントの知見を「不確実性のマネジメント」という視座でとらえなおすことで、応用を利かせやすくしてくれているのです。

タスクは、難しそうな(=不確実性の高い)ものを優先的に、分割して(=不確実性を低めて)消化していけばいいし、マーケットでの需要がわからない(=不確実性の高い)ケースでは、ユーザーへのヒアリングで仮説を検証して(=不確実性を低めて)対処していけばいい。

テストコードに似た応用性の広さ

これには個人的に既視感があります。

プログラミングの指針もいろいろあるのですが、「影響範囲を少なくしたい」という課題への対応として「グローバル変数を使わなくする」というノウハウがあったり、「コードを見やすくしたい」という課題への対応として「分岐を少なくする」というノウハウがあったりします。これらは、一見課題が独立しているので、対応方法に応用性がありません。

ですが、対応方法の指針として「テストコードを書きやすいように設計する」というものを取り入れると、がぜん応用性が増します。何か迷ったときに「テストコードを書きやすいかどうか」で考えればいいわけです。不思議なもの(?)で、テストコードを書きやすいように気を付けているだけで、「グローバル変数を使わなく」なり、「分岐が少なく」なります。

「不確実性のマネジメント」というコンセプトには、「テストコードの導入」に似た応用性の広さを感じます。「不確実性」を意識することで、様々な課題への対応に一貫性を持たせられるからです。何か迷ったら、「不確実性」を見直すことから始めればよいと思うことができます。(こじつけかも。すみません。でもそう思ったんだw)

本書での解説で鮮やかだったもののひとつに、「プロジェクトマネジメント」と「プロダクトマネジメント」の違いに関するものがありました。

もちろん色々な切り口があると思うのですが、本書流に「不確実性」でとらえなおすと

プロジェクトマネジメント プロダクトマネジメント
目的 終了すること 終了しないこと
抱えている不安 スケジュール不安 マーケット不安
対処すべき不確実性 方法不確実性(どのように作るか) 目的不確実性(何を作るか)

となります。ものすごくわかりやすい...!

なので、プロダクトマネージャーは、「何を作るのか」を重点的に対処すればいいことになります。

本書は、数々のマネジメントに関するノウハウを、「不確実性のマネジメント」という観点で整理してから紹介してくれています。なので理解しやすく、現場でも応用できるような気がしてきます。

他人 & まとめ

こちらでも書いたのですが、私が本書で気に入ったのは、

人間にとって、本質的に「わからないこと」 はたった2つしかありません。それは、「未来」と「他人」です。

というとこ。

よくやってしまいがちなのは、誰かの気持ちがわかってしまうかのように錯覚してしまうことです。

そんなわけないですよね。

私の気持ちをおもんばかって神妙な顔をしている上司、今私がここには書けないようなしょうもないこと考えているなんて思いもよらないですよねww 下手したら、自分の気持ちだって整理つかないことあるわけだから。

「未来」と「他人」は、私にとって仕事に限らず深刻な問題です。*1これを、私が仕事にしている「エンジニアリング」をテーマに書いてくれるなんて、一粒で二度おいしい本でした。

参考

作者の広木大地さんによるリファレンスガイド。本書が単なる思い付きではなく、膨大な蓄積の上に成り立ってることがわかります。この記事は途中までなので、続き出るといいな。

qiita.com

以下のまとめは本書の俯瞰にすごく役に立つので、たまに見返しておくとお得感あります。

qiita.com

*1:深刻で不安だからこそ、「未来」や「他人」と向き合わなくて済む時間って大事じゃないですか?