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「VOYAGE GROUP エンジニアの公開ガチ評価会」で、制度を運用可能にする文化を感じてきた

「VOYAGE GROUP エンジニアの公開ガチ評価会」に参加してきました。

voyagegroup.connpass.com

エンジニアの評価はすごく難しくて、公平感を保つの困難だし、数が増えてくるとすぐ見切れなくなっていくんですよね。各社いろいろな工夫をされているのですが、名高い VOYAGE GROUP の評価会制度については特に興味を持っていました。

5分でわかる技術力評価会

最初にCTOの @makoga さんによる、「5分でわかる技術力評価会」。

課題意識や目的があってのこの制度で、概要は私もなんとなく知っていました。

成り立ちや制度設計を改めてお聞きすると、この評価制度がものすごく洗練されていて、どこかで間違いがあってもすぐに補完できる冗長性のような設計もあって、一朝一夕でできていないことがよくわかりました。

そして、一回の評価にコスト(つまり時間)をかけてるなぁ...と。コストがかかるので、それを嫌いそうな事業側のメンバーやもっとコードを書きたいエンジニアにこれを理解してもらうのは大仕事に違いありません。

このプレゼンは早足だったのですが(さすがに5分で収まる内容ではない)、全く淀みなく一直線に話されていて、この評価制度を根付かせるために、何度も何度もこの説明をされてきたんだなぁ、と思いを馳せて無限に尊敬しました。

公開評価会

@yangwei21 さんによる評価会を見学できました。普段は、被評価者1人+評価者2人で、会議室などで行っているとのこと。

自分などは20分程度のLTの準備するにもあたふたするwのですが、この日の発表は60分(!) 、本番は90分(!!!) 程度かけて行っているそうです。発表の最中にも、コードのかなり細かい部分にまで指摘が飛ぶので、プレッシャーもかかりそう...

ただ、評価会の間は雑談っぽいツッコミなどもあったりして、指摘自体は鋭いものばかりであるものの、和やかな空気は維持しているように思いました。

Symfony + Modern JavaScript = Symphony · GitHub

Symfonyアプリのフロントが題材になってたのですが、社外のSymfonyのコード見るの久しぶりでちょっと感動。twig と Vue.js のそっくりの記法が同じファイル内で同居してたりするヤバさは非常に面白かったですww

↑ この名言も良かったww

評価会を運用可能にする文化

懇談会があったので、登壇されていた @yangwei21 さんにお話を聞けたのですが、

  • 普段の業務で、評価会で発表できる開発をしているか考える
  • このコード、評価会でどう言われるか? を考えながら開発する
  • 発表前に、自チーム内で素振りしたりする

といった話が印象的でした。

この評価会、漠然と「直前の準備が大変になるんだろうなぁ...」程度に考えていたのですが、直前だけではなく、普段の業務に影響を与えているんですよね。

環境としては大変なのかもですが、コードを書くということにしろ、他人に説明するという能力にしろ、スキルアップを促す方向に作用しています。「評価に役立つ」ことってスキルアップできる環境であることと表裏一体なのだろうなと。

孫引きになってしまうのですが、

エンジニアのためのマネジメントキャリアパス ―テックリードからCTOまでマネジメントスキル向上ガイド

エンジニアのためのマネジメントキャリアパス ―テックリードからCTOまでマネジメントスキル向上ガイド

構成員が、意識しなくても自然と仕事をこなせる、そんな行動原理や行動様式が組織にあれば、それこそがその組織の「文化」である。

フレデリック・ラルー

という記述があって、評価会に向けて開発するという姿勢も VOYAGE GROUP の「文化」になっているのだと思いました。

非常に恐縮でラッキーなことに @makoga さんにもお話を聞けたのですが、エンジニアのグレードも含めて 「事業への貢献」を評価軸にすることを徹底 されているという話が特に興味深かったです。

技術要素の選定ひとつとっても、各人の視点の違いや宗教の問題w で決まらないこともあると思うのですが、それがどのように事業に貢献するかという観点があることで、議論に筋が通る感じがします。

よく「技術的負債の返済を事業側に理解してもらえない」みたいな話もありますが、評価会などで「どのように事業に貢献するか」を説明するプレッシャーを受け続けているエンジニアであれば、理解してもらうためのロジックは勝手に作っているはずです。*1

それと、評価会制度自体も最初は極小規模から初めて、ちょっとずつ大きくしていったとのことでした。

もちろんうまくいくかどうかもわからないのでスモールスタートで行くのはわかりやすいのですが、少しずつ浸透させていくことで、この制度を回していくための文化のようなものを熟成できていっている感じがしました。(本当に勝手な感想ですが)

この評価制度は控え目にいって最高なのですが、現状の完成度まで育てていった長い長い道のりの方に気持ちが持っていかれたのでした。

*1:なので、あえて「技術的負債を返済しない」という決断も、エンジニアからできるはず